家族信託した場合の不動産名義について
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
家族信託すると不動産の名義はどうなるか
高齢となった親の認知症対策として委託者である親が受託者を子供として委託者である親所有名義の不動産を受託者へ移転し、不動産の管理・処分・運用などを目的に信託契約を締結した場合には、親の所有財産であった不動産は受託者である子供が管理運用していく信託財産となります。
信託の効力は原則として信託契約の締結により生じますが、受託者が管理処分する権限があることを第三者に公示するために受託者名義へ所有権移転の名義変更手続きを行う必要があります。
(参考 信託法4条1項)
信託財産となった不動産の名義変更登記手続が行われると登記簿の所有権に関してどのような記録が新たにされて信託契約で締結した条項内容が信託目録としてどのように公示されるのか下記に事例ひな形を挙げて説明したいと思います。
不動産の登記申請は誰がおこなうのか
家族信託で信託財産とした不動産の名義変更は不動産を管轄する法務局で所有不動産の名義人である委託者が登記義務者となり、子供などの受託者を登記権利者として共同で申請しなければなりません。
また単に受託者へ所有権移転をするだけではなく、不動産を信託したことを公示するため所有権移転登記と同時に信託登記も行う必要があります。
なお、信託の登記は受託者が単独で申請することになります。
同時に同一の申請書で登記申請手続きを行うため登記の目的は「所有権移転及び信託」として、登記の原因日付は家族信託の契約成立日となります。
(参考 信託法98条1項、2項)
登記申請で必要となるおもな書類や登録免許税はどのくらいかかるのか
委託者が用意する書類
・委託者が登記名義を取得した際に交付又は通知を受けた登記済証又は登記識別情報
・登記義務者となる委託者の三か月以内の市区町村長の作成した印鑑証明書
・登録免許税を計算するための固定資産の評価証明書
※上記の他に司法書士への委任状や司法書士作成の押印書面があります。
受託者が用意する書類
・市区町村が作成した登記名義人となる受託者の住民票などの住所証明情報
・信託目録に記録すべき情報として信託契約書
※上記の他に司法書士への委任状や司法書士作成の押印書面があります。
登記申請で発生する登録免許税
・信託の登記分として不動産の固定資産評価額の0.4%
(土地に関する信託登記は租税特別措置法72条1項2号より平成31年3月31日までは0.3%の軽減規定があります。)
・所有権移転登記分は登録免許税法7条1項1号より非課税となります。
家族信託により受託者名義となった場合の登記記録及び信託目録例
(事例)
上記のように委託者及び権利・利益を受ける受益者を同一人物にして贈与税や不動産取得税といった大きな税金が発生しないように契約締結することが重要です。
上記のような事例で家族信託の契約を行うと不動産の名義が下記のように登記簿や信託目録として
公示されるようになるため下記の図をご覧いただくと受託者が処分権限を持つ名義人となるイメージが掴みやすくなると思います。
なお信託目録の記載事項に関しては家族信託のスキーム組成にあたり委託者、受託者、近しい親族を含めて詳しくヒアリングを行い理解同意のもと吟味しながら必要となる信託契約条項を作成して契約を締結していく必要があり、信託の登記事項として必要と考えられるべき事項を記載しますので、下記の信託事項はあくまで参考例となります。
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