相続登記の義務化の可能性

司法書士山本宣行のコラムです。

ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

相続登記の義務化の可能性

昨今では空家問題など土地の名義が故人のまま数世代に渡り放置される等の原因で所有者不明の土地について対応策が取りだたされておりますが、政府がこうした所有者不明問題などの解消対策を話し合う関係閣僚会議が6月1日に開かれ基本方針が決められたというニュースがありました。
この中で不動産の所有権が現状誰にあるのかを明確にするため相続登記を義務化にして権利関係を正確に登記に反映していく仕組み作りを検討して2020年までに不動産登記法や民法などの関連法を改正する可能性が出てきているようです。
早ければ2019年の通常国会へ不動産登記法の改正案を提出するようです。
このように政府で相続登記の義務化検討にあたり、本コラムでは相続発生時の不動産名義変更による相続登記の必要性について考えてみたいと思います。

なぜ所有者不明の土地となる空家が出てきてしまうのか

そもそも、売却や贈与、融資を受けた時に抵当権などの担保を不動産に設定する場合は権利関係を明確にして第三者に対抗するために当たり前のように登記手続きが行われます。
当たり前のように登記手続きが行われているのになぜ所有者不明の不動産が出てきてしまうということになりますが、原因は相続にあると考えられます。
それは相続が発生しても落ち着いてから登記をすればいいと考えたり、遺産分割が思うようにまとまらずそのまま不動産を活用することなく数世代にも渡って放置してしまうからと考えられます。
相続が発生して不動産名義変更を行わないと名義が当然に故人のままということになります。
故人名義のままであったとしても、住んでるだけであれば、固定資産税をそのまま払い続けることで特に問題も発生しないのかもしれません。
しかし相続人にとっては不動産の名義変更手続きを相続発生後速やかに行わないことで、思いもよらず後になってから困ってしまうことも考えられますので、どのようなリスクが可能性としてあるのか下記で説明していきたいと思います。

相続登記をしない場合のリスクとは

前述のように登記手続きは登記簿に所有者を反映することで誰が見ても不動産の権利関係が明確になり売買などの取引における安全性や第三者に権利を主張し対抗することが可能となります。
土地や建物などの不動産を相続で取得する場合には、取引と違い第三者に権利関係を証明したり主張するようなこともあまりないため、登記については軽視されてしまうことも中にはあるようですが、様々なリスクの可能性を考えていくと登記を行う必要性や重要性が理解しやすいかと思います。
具体的には以下のようなリスクが考えられます。

※故人の名義のままでは第三者に直接売却が出来ない

しばらく放置して不動産売却を行いたいと思った時には相続登記が必要です。相続人の状況が変化すると遺産分割協議が出来なくなってしまう場合や揉めてしまうリスクが考えられます。

※故人の名義のままでは金融機関から融資を受けて担保の設定が出来ない

※不動産の賃貸や建物を取り壊すなど活用する場合には法定相続人全員の同意が必要となってしまう可能性がある

相続発生時の間もない頃には法定相続人が円満で権利者を口約束で決めていたとしても時間が経ち心変わりしてしまう場合など金銭を支払わないと同意しない相続人が出てきてしまうリスクが考えられます。

※相続人の1人が単独で法定相続の登記を行い自分の持分を不動産業者に売却してしまう可能性がある

他の相続人がいる場合は単独で法定相続分による全員の相続登記が保存行為により登記手続き上、認められています。また不動産業者によっては持分を購入する業者もあるようです。
したがって、相続人の経済状況によっては、保存行為で勝手に法定相続分の登記がなされ自己の持分のみを知らない業者に売却されてしまい居住している相続人にとっては気が付くと第三者との共有名義になってしまっていたというような事例もあるようです。

※他の相続人に多額の借金が出来てしまった場合には、債権者から法定相続の登記がされてその持分を差し押さえされてしまう可能性がある

相続人が私生活で浪費家である等、金銭的に問題があるような場合には、遺産分割で取得した他の相続人が早めに相続登記しておかないと法定持分の登記がなされ差押えを受けてしまうリスクも考えられます。

相続人が円満だったのに時間が経過することでリスクが増加する訳とは

相続人が円満であれば、登記をしばらく放置しても行いたいときにすればいいとお考えの方もいらっしゃると思いますが下記のようなケースも考えられるため、円満であるほど速やかに遺産分割を行い不動産の相続登記手続きを行っておいた方がいいでしょう。

他の相続人が病気や認知などで意思能力が無くなってしまう場合は後見人が必要となるケース

相続人の誰かが判断能力を失ってしまうと遺産分割には後見人の申立てが必要となってしまいます。判断能力をなくした家族が煩雑なため後見の申立てを嫌がるケースや後見の申立てが行われても後見人に代償金を支払わなければハンコを押して貰えないケースなど遺産分割協議が困難になってしまう場合もあります。

海外に住まいがある人や行方不明の相続人が出て遺産分割が困難となるケース

相続登記を放置して数世代にも渡ると故人名義の法定相続人が増えて多人数となります。
代表となる相続人が話をまとめようとした場合に上記のような所在不明の相続人が存在することで遺産分割協議は事実上出来なくなってしまいます。

さらなる相続が発生して相続人が増えて揉めてしまうケース

相続登記をしばらく放置していると相続人の中に亡くなる者が出てきてしまい更なる法定相続人が発生することで非協力的な相続人が出てくるなど揉めてしまう原因となってしまう可能性もあります。

不動産の相続登記を行うには

対象となる不動産の管轄別に設置された法務局で申請関係書類と一緒に登録免許税という税金を納める方法で登記の申請手続きを行います。
その他にも申請に伴い戸籍書類や不動産関係の書類調査や遺産分割協議書の作成など煩雑な部分も多くありますのでお近くの司法書士にご相談されると手続きのアドバイスや書類収集や申請代行も引き受けてくれますのでお悩みや負担が軽減されますので利用されることをお勧め致します。

初回無料相談のあおば法務司法書士事務所にご相談下さい

相続手続きは多くの方の人生にとって数回あるかないかの手続きかと思います。
故人に対する悲しみも消えない中で手続の窓口に行くと専門的な用語や慣れない煩雑な手続で肉体的にも精神的にもさらに負担がかかってしまいます。
当事務所では、慣れない不動産名義変更はもちろんのこと相続手続き全般と幅広く対応しており相続人皆さまの負担を少しでも軽くなるよう、初回無料相談を設けておりますのでお気軽にご利用下さい。

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