清算型遺言による相続の不動産名義変更について
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
清算型遺言に基づいて相続不動産の登記手続を行う場合
遺言書の記載内容の中で故人の不動産を売却処分したうえで売却代金から諸費用を引いた残金を法定相続人や孫などへ相続若しくは遺贈させようとすることを清算型の遺言と呼んでいます。
一般的に遺言書に定められた遺言執行者が指定を受けた相続不動産の売却手続や伴う登記手続を行い売却代金の交付を相続人や受遺者に対し行っていくことになります。
清算型の遺言書を作成する場合の遺言書の記載の一例や遺言執行者が行う具体的な登記手続を以下で説明していきましょう。
遺言で不動産を売却して換価金から諸費用を控除し相続人に相続させる場合の記載
冒頭でも述べました清算型の遺言書を作成する場合において参考までに一例となりますが、例えば、不動産を売却により換価させて不動産売却等に伴う諸費用を控除した残金を相続人に相続させる旨の遺言書の記載条項としては下記のような記載方法があります。
なお、下記のような遺言書を作成する場合には円滑な財産の換価処分を行うため遺言執行者を定めて条項に指定しておくことが必要となります。
不動産登記手続上のポイント
「遺言執行者を不動産を売却したうえでその代金を相続人に分配する」というような清算型の遺言書が作成されたケースでは、その後遺言者が亡くなり相続が発生した場合には以下の不動産登記手続が必要となります。
①相続人名義とする法定相続による共同相続人全員のための相続登記を行う
相続開始によりいったん被相続人の共同相続人が被相続人名義の不動産を取得することになるため、権利変動の過程を登記簿に反映させる必要が登記実務上求められます。
(参考 昭和45・10・5民甲4160、昭和58・3・28民三2232、平成4・2・29民三897)
②買主名義とする売買による所有権移転登記を行う
遺言執行者の権限について
上記のような不動産を売却換価する事案で遺言執行者の権限としてどこまで手続を行えるのかという疑問点も発生します。
本来、相続を原因として相続登記を行う場合は相続人自身が行うものであって遺言執行者はその登記申請を行えないとされています。
しかし、清算型の遺言に基づいて遺言執行する場合には売買による所有権移転登記の前提となる相続登記については登記実務上、中間省略できないものであって遺言執行者は相続人の法定代理として単独で相続登記申請が可能であるとされています。
仮にこのような場合に遺言執行者が相続登記を単独で出来ないとなれば、法定相続人全員の協力が必要になり相続人からの協力が得られないのであれば、手続を進めることが困難となり故人の意向を実現できずそもそも遺言書を作成した意味がなくなってしまいます。
(参考 昭和52・2・4民三773、登記研究822・189)
登記手続が必要となる相続登記と売買登記は同時に申請する必要があるか
同時に登記申請を行う必要がなく別々に登記手続を行うことが可能です。
実務では売買を行う前に余裕をもって事前に相続登記を行っておくことが一般的でしょう。
売買登記で使用する売主の登記識別情報について
遺言執行者が単独で相続登記を行った場合は登記識別情報につき法定代理人の権限で申請している場合として名義人となる各相続人の登記識別情報は法定代理人と考えられる遺言執行者に対して通知されるため売買登記の申請の際にも登記識別情報において問題にならないと思われます。
(参考 不動産登記規則62条1項1号)
不動産を売却した際の譲渡所得税について
不動産を売却した際に売却益に対して発生する譲渡所得税ですが換価代金を取得する相続人が納めるべき税金となります。
但し換価代金を取得する特定の相続人や受遺者がきちんと納付しない場合には登記簿上では法定相続人による登記が便宜なされているため、不動産の換価金とは関係のない相続人が税務者から納税の催促を受けてしまう可能性もありトラブルの要因となってしまうことも考えられるため注意が必要となります。
初回無料相談のあおば法務司法書士事務所にご相談下さい
相続手続きは多くの方の人生にとって数回あるかないかの手続きかと思います。
故人に対する悲しみも消えない中で手続の窓口に行くと専門的な用語や慣れない煩雑な手続で肉体的にも精神的にもさらに負担がかかってしまいます。
当事務所では、慣れない不動産名義変更はもちろんのこと相続手続き全般と幅広く対応しており相続人皆さまの負担を少しでも軽くなるよう、初回無料相談を設けておりますのでお気軽にご利用下さい。