自筆証書遺言の方式緩和について
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
相続法制の見直しについて
相続法制の見直しについて平成30年7月13日に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)」が公布されました。
公布されたといっても直ちに効力が発生する訳ではなく、実際の法律の施行期日としては、段階的になっており「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」は公布日から起算して1年を超えない範囲内(2019年7月12日まで)において政令で定める日とされております。
また「自筆証書遺言の方式緩和」に関しては公布日から起算して6か月経過日(2019年1月13日)を施行期日としており、そのほか遺言に関連する「法務局における遺言書の保管等に関する法律」は公布日から起算して2年を超えない範囲内(2020年7月12日まで)において政令で定める日を施行期日としています。
なお、「配偶者の居住の権利」に関する法律も公布日から起算して2年を超えない範囲内(2020年7月12日まで)において政令で定める日を施行期日としています。
相続法の見直しは、昭和55年の改正以来となり一般市民や実務に与える影響も大きなものとなりますが本コラムでは自筆遺言書作成に関連する改正内容についてポイントを説明をしていきたいと思います。
自筆証書遺言に関する方式緩和について
改正の緩和ポイント
◎全てを直筆で作成する必要がなくなり遺言者の負担が軽くなる
◎現行制度では財産目録を含め全て遺言者が直筆で作成する必要があったが財産目録に関してはパソコンで入力が可能となることや通帳のコピーや不動産の登記事項証明書(登記簿)を目録として添付が可能となります。
注意すべきポイント
パソコンで作成した目録や通帳のコピーなどを添付する場合には遺言者本人が必ず直筆で署名し押印しなければなりません。
また民法968条の条文では自筆遺言の「証書中(前項の目録を含む。)の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」と定められているため、単に斜線を引いて訂正印を押印しただけでは無効となってしまうことにも注意が必要です。
厳格な修正方法が定めされているため、誤字脱字などがあれば1から書き直してしまった方が確実かもしれません。
署名押印を求めることで偽造を防止できる趣旨のようですが、もともと筆跡鑑定の制度がない自筆証書遺言のため、真偽が疑われそうな家族関係の場合には意思能力を確認し、公証人や証人が立ち会う公正証書で遺言書を作成された方が確実で紛争性を防止できるのはいうまでもありません。
方式緩和はあくまでも遺言者が作成時の負担を軽くすることに重点が置かれているため、相続発生後の相続人同士の疑いや紛争性の防止軽減につながるかどうかとは別問題として考えた方がいいかと思われます。
法務局における遺言書の保管等に関する法律について
改正のポイント
公的機関である法務局で自筆証書の遺言書を保管する制度を創設し遺言者が保管の申請を行うことで受けられるサービスとなります。
※管轄の遺言書保管所としては、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する保管所となります。
現行制度では自宅の金庫や仏壇、押し入れなどに遺言者自身が保管してしまうことが多いことから紛失などの不安が解消されると考えられます。
従来にあった自筆証書遺言作成後の問題点
・遺言書が相続発生時に発見されない場合がある。
・相続人により意図的に破棄隠匿されてしまったり、内容を改ざんされてしまうおそれもある。
新制度の期待される効果として
◎遺言者が保管の申請を行うことで前述の問題解消につながり相続人間の紛争防止につながる。
◎保管の申請を行うことで相続発生後に相続人が家庭裁判所へ検認申立ての手続きが不要となる。
注意すべきポイント
保管の申請を行うことで相続発生後に相続人が家庭裁判所へ検認申立ての手続きが不要となるが相続人から遺言書保管所に対して相続発生後には遺言書の写しの交付・閲覧が必要となりこの交付・閲覧がなされると他の相続人に対しても遺言書が保管されていることが通知されてしまうため、知られたくない相続人などが存在する場合には新たな火種となる可能性は懸念されます。
したがって、前妻の子供や遺言内容を知られたくない他の相続人が存在するような場合に通知がいかないよう、かつ隠密に遺言書を使って相続手続きを行いたい事情などがある場合には、公正証書で遺言を作成しておけば他の知られたくない相続人へ通知がいくおそれもないため安心かと考えられます。
自筆証書遺言改正に関するまとめ
自筆証書遺言は改正により負担軽減となる反面、要件を間違えると無効となってしまい、注意しなければならない点も多くまた相続発生後に他の相続人に通知がいくため内容が知られてしまい争いとなるリスクも高くなるため、ケースによっては公正証書で遺言作成を検討した方がより良いケースもあるため、専門家などに相談のうえ、残された相続人がより円満となるように間違いない方法を選択されることをお勧めします。
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相続手続きは多くの方の人生にとって数回あるかないかの手続きかと思います。
故人に対する悲しみも消えない中で手続の窓口に行くと専門的な用語や慣れない煩雑な手続で肉体的にも精神的にもさらに負担がかかってしまいます。
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