遺言執行者の通知義務について
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
遺言執行者の権限の見直しについて
相続法の見直しは、昭和55年の改正以来となり一般市民や実務に与える影響も大きなものとなりますが相続法改正に伴う「遺言執行者の権限の明確化」に関しては既に令和元年7月1日から施行されております。
本コラムでは相続法改正に伴う「遺言執行者の権限の明確化」に中で新民法1007条の遺言執行者の任務の開始において新たに2項を設けており、遺言執行者が任務を開始した場合の相続人に対する通知義務を負わせています。
本コラムでは「遺言執行者の相続人に対する通知義務」とはどのうよう内容となっているのかポイントを説明をしていきたいと思います。
遺言執行者に就任すると
旧民法では遺言執行者が就任した場合でも遺言の内容を相続人に対して通知すべき旨の明文規定はありませんでした。
ただし、遺言執行者から通知がないことに関して,何らかの理由で後から事情を知った相続財産を取得しない相続人との間でトラブルが生じることも少なくありません。
このようなことから旧法においても弁護士や司法書士等の専門家が遺言執行者として就任する場合には相続人に対して遺言執行者に就任した旨の通知や遺言内容や財産目録を交付しているのが一般的です。
今回の相続法の改正では遺言の執行はあくまでも中立公正に行われるべきであるとの観点から,遺言執行者は,就職後にその旨をすべての相続人に通知することを義務づけるべきであるとしており民法1017条2項を新たに設けて遺言執行者に通知義務を課す規定を設けております。
この通知義務は就職の事実だけを知らせるのは不十分で遺言書の内容(特に公正証書遺言には検認手続がないため必要性が高いと考えられます)まで知らせるべきで,具体的には遺言書のコピー等を添付して通知する方法が考えられます。
☑旧民法と新民法の条文比較
(遺言執行者の任務の開始)
第1007条 旧民法
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わねければならない。
第1007条 新民法
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わねければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
遺言執行者が通知すべき範囲について
明文の規定から見ますと相続人を対象としており相続人以外の遺贈等による受遺者は通知の対象としていません。
相続人としては遺言の履行義務や遺留分の請求等を主張するにあたり遺言内容や遺言執行者の有無につき重大な利害関係を有していますが特定受遺者に関してはその必要性がないと考えられているようです。
なお、包括受遺者に関しては民法990条により相続人と同一の権利義務を有すると規定して相続人に関する規定が適用されることになりますので遺言執行者の通知が必要であると考えられます。
新法施行日前に開始した相続について
相続法改正に伴う「遺言執行者の権限の明確化」に関しては既に令和元年7月1日から施行されておりますが新法施行日前に故人が亡くなり相続が開始した場合はどのような扱いとなるのか。
この場合に関しては遺言執行者の就職した日付が新法施行日である令和元年7月1日以前か否かにより遺言執行者の通知義務の有無が異なることになります。
令和元年7月1日以前であれば不要と考え令和元年7月1日以後に遺言執行者となれば新法が適用され通知義務を負うことになります。
遺言執行者の任務について
遺言書により遺言執行者として指定された人は、相続開始後に遺言執行者となることを承諾した場合は、相続人に就任した旨の通知を送付し遺言の執行手続に着手していきますが、大まかな流れとしては下記のようになります。
①戸籍謄本等で故人の法定相続人を調査して遺言執行者に就任した旨の通知とともに遺言書の写し等を各相続人へ送付
②不動産や預貯金等の相続財産の調査を行い、財産目録を作成し各相続人へ交付
③遺言書の内容に従い遺言執行者が不動産の名義変更手続(相続登記)や預貯金解約手続等の相続手続を行い相続人や受遺者に相続財産を引渡し遺言内容を実現する
④遺言執行が完了したことによる遺言執行者の事務終了通知及び相続手続の結果報告を行う
まとめ
遺言書は様々な家庭事情や残される相続人が困ることのないよう作成しておけば残された家族にとって安心でありがたいものになることは間違いありません。
相続法の改正に伴い遺言にまつまる法律も変更されており手続き等で押さえるべきポイントや変更点もありますので遺言書の作成を検討されている方や相続が発生した場合には速やかに相続登記や相続手続きを行えるよう専門家などにご相談されることが重要といえます。
初回無料相談のあおば法務司法書士事務所にご相談下さい
相続手続きは多くの方の人生にとって数回あるかないかの手続きかと思います。
故人に対する悲しみも消えない中で手続の窓口に行くと専門的な用語や慣れない煩雑な手続で肉体的にも精神的にもさらに負担がかかってしまいます。
当事務所では、慣れない遺言作成はもちろんのこと相続手続き全般と幅広く対応しており相続人皆さまの負担を少しでも軽くなるよう、初回無料相談を設けておりますのでお気軽にご利用下さい。