遺産分割協議は1度で行わなければならないのか
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
遺産分割協議で結論が出るまでに相当な時間を要する場合
故人の残した財産を調査していくと、遺産の評価方法や生前の寄与分や特別受益などを考慮しながら相続人の分配方法を決めていく場合、結論が出るまでに相当な時間が経過してしまうケースもあります。
このような場合に結論が出るまで相続手続を保留にしておくのはいつもでも相続財産の浮動状態が続き相続人にとって精神的にもあまり好ましいとはいえません。
遺産分割協議が難航するような場合でも財産の分配に争いのあるものと争いのないものに区別して相続人全員の同意のもと、一部分割を行うことができます。
このような一部分割は相続実務において有効な手段として行われております。
遺産分割協議の一部分割を行う場合の効果や注意ポイントなどを説明していきたいと思います。
遺産の一部分割を行う場合の効果とは
相続手続で遺産分割協議書を提出する場合などに必要最小限の情報を開示することができる
一部分割を行う場合には複数の遺産分割協議書を作成することになります。
したがって、相続手続きで必要な対象財産のみを記載した遺産分割協議書を金融機関や法務局などの窓口に提出することが可能となり、他の遺産分割協議書に記載した知られたくない内容については極力第三者の目に触れないようにして情報を必要最小限に抑えながら一部の相続財産の手続を進めていくことができます。
故人名義の不動産が複数ある場合に分割可能な不動産に関しては名義変更を進めることができる
現に相続人が居住している不動産や売却をして換金したい不動産などがある場合など分割内容が決まっていれば一部分割を行った遺産分割協議書を作成することで相続人名義に登記手続きが可能となるため、不動産処分を速やかに行っていくことができます。
分割可能な故人名義の預貯金を解約しておくことで相続税の納税資金を確保することができる
故人の相続財産として複数の不動産がある場合には、不動産の評価方法に争いがおこり、遺産分割協議がいっこうに進まないケースもあります。
仮に相続税の申告期限が迫ってきて相続人個人の財産では相続税を支払う資金が捻出できないような場合でも、上記のようなケースでは不動産をすぐに売却することは厳しいといえます。
このような場合に争いのない預貯金などの金融資産があれば一部分割を行い相続手続きを進めて換金することで相続税の支払いにあてることが可能となります。
遺産の一部分割を行う場合の注意ポイントについて
争いのない財産について一部の分割協議を行うことで一部の遺産処分を先行して進めていくことができますので相続実務上、有効な手段ですがが、下記に記載するような注意すべきポイントもあります。
残余財産の分割への影響に注意する
残余財産の分割を行う際の一部分割の影響が相続人それぞれどのような考えなのか認識が異なっている場合もありますので、後日の紛争を増やさないように予防するためにも一部分割した財産に関して遺産分割協議書の記載事項に一部分割であること、残余財産の分割に影響を及ぼすのか及ぼさないのかなどを相続人全員で話し合い文言の記載を明らかにしておくことが重要となります。
また専門家などから意見アドバイスを聞いたうえで協議書類を作成していくことで遺産分割協議を円滑に進めていくことが可能となる場合もありますので相談しながら手続きを進めていくことも有効な手段となるでしょう。
一部分割の回数が多くならないように注意する
本来、遺産分割協議は全ての財産の配分を同時に決めていくことが原則となります。
基本的なことではありますが、遺産分割協議書を複数作成することになりますので、協議を細かく分割しすぎると紛失や失念のリスクも可能性として高くなってしまいます。
また一部分割の回数が多くなってしまうと、遺産分割協議書も複数枚となり、協議内容や文言に整合性がとれなくなってしまうなど後日混乱や誤解を招いてしまう可能性もあります。
新たな紛争に発展してしまえば、せっかく相続手続きの利便性を高めるために行った一部分割が意味を無くしてしまいかねません。
したがって遺産分割協議の回数があまり多くならないよう、便宜的な手段で一部分割を行うことを念頭において相続人全員の理解同意のもと行うことが大前提となります。
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相続手続きは多くの方の人生にとって数回あるかないかの手続きかと思います。
故人に対する悲しみも消えない中で手続の窓口に行くと専門的な用語や慣れない煩雑な手続で肉体的にも精神的にもさらに負担がかかってしまいます。
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