相談事例Q&A 生前贈与

よくあるご相談を項目別にQ&Aとして問題点やアドバイスを載せております。
※実際の相談例をそのまま載せているわけではございませんのでご了承下さい。

相談事例(1) Q:不動産の贈与をした場合にどのような税金が発生しますか?

A:不動産を生前に贈与する場合の主なメリットとして将来相続が発生して相続人が揉めてしまいそうな場合は贈与する相続人を決めて確実に短期間で移転出来るということが考えられます。
但し、不動産を贈与する場合にはデメリットとして下記の税金が発生してしまいます。

法務局に不動産の贈与登記を申請する際の登録免許税

※不動産評価額の2% 例:1000万円の土地を贈与する場合は20万円

贈与税

参考 一般贈与税の速算表 ※兄弟間の贈与など特例贈与財産用に該当しない場合

基礎控除後の課税価格 適用税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

参考 特例贈与財産用の速算表

※直系尊属(祖父母や父母など)からその年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与の場合

基礎控除後の課税価格 適用税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

不動産取得税

※基本的に取得した不動産価格(課税標準額)に下記の表の税率を乗じた金額となります。

不動産価格は原則として固定資産課税台帳に登録されている価格です。
平成30年3月31日までに宅地等(宅地及び宅地価格を基に評価された土地)を取得した場合、取得不動産の価格×1/2を課税標準額とする負担調整措置が講じられています。

(参考 地方税法附則第11条の2第1項)

取得日 土地 家屋(住宅) 家屋(非住宅)
平成20年 4月 1日から
平成30年 3月31日まで
3% 4%

不動産取得税の詳細は神奈川県のホームページをご覧ください
(参考http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f520239/p13774.html

上記のように不動産を贈与する場合は受贈者には大きな税金の負担があるため贈与しなければならない事情と比較考慮の上、慎重に手続きを進める必要があります。
不動産の贈与では大きな税金が発生してしまう場合も多いため当事務所ではご要望があれば税金の専門家である税理士を紹介させて頂くことも可能です。

相談事例(2) Q:不動産を子供に贈与した時に契約書は作成しないといけないですか?

A:民法上の贈与は当事者の意思表示と受託で効力が生じますがどのような内容の契約が成立したか後日証明し紛争防止や紛争時の意図した権利の行使や義務の履行を実現するために契約書は作成するべきものとなります。
また不動産の名義変更では登記の原因となる事実や法律行為に基づいて書類を作成する必要がございますので贈与の契約書は必要となります。
贈与契約書と一緒に登記申請の際に登記原因証明情報として受贈者が受諾の意思表示となる当事者が贈与契約を締結した旨の記載や贈与の原因日となる受託の意思表示日や贈与物件などの原因事実を記載し作成した書類を管轄法務局に提出する書類となります。

相談事例(3) Q:不動産を贈与する場合に発生する贈与税が安くなることはありますか?

A:贈与税の最高税率は55%と非常に高いものとなりますが贈与税の特例制度を正しく活用することにより控除されて贈与税を少なく納めることができます。
但し、特例制度の条件やメリット・デメリットを理解し将来を想定したうえで選択しないと税金で損をしてしまうこともあるため事前に専門家である税理士にアドバイスなどを受けて選択された方がよろしいかと思います。
当事務所ではご要望があれば税金の専門家である税理士を紹介させて頂くことも可能です。
以下は贈与税に関係する特例制度に注意ポイントを含めて挙げておりますので参考にしてみて下さい。

(特例制度)

暦年課税

個人が1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残額に対して課税されます。
原則として1年間の贈与を受けた額の合計額が110万円以下であれば贈与税がかからないということになります。

注意ポイント

  1. 定期的に贈与を受けることが贈与者との間で契約されている場合などで贈与する総額が決まっていて分割払いにしていくようなケースには、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利の贈与を受けたものとして贈与税がかかる場合があります。
  2. 死亡直前に相続税の節税を目的としている場合に相続人に対する相続開始前から過去3年以内の贈与は相続財産に持ち戻され課税されてしまいます。
  3. 長期的な贈与で証拠がないと税務署に立証が困難となり総額を課税されるおそれがあるため贈与の都度で贈与契約書の作成が好ましい。
  4. 受贈者名義で作成した通帳を贈与者が保管し入金のみで出金がないケースなど名義預金とみなされ税務署に贈与を否認されることもある。
相続時精算課税

贈与時に贈与財産の価額の合計額から2500万円控除後の金額に一律20%の税率を乗じて計算した贈与税を納税します。
さらに相続発生時に贈与財産の価額と相続財産の価額を合計額として相続税額を計算し納税済みの贈与税相当額を控除することで贈与税と相続税に通じた納税を行うものとなります。

注意ポイント

(1)贈与者と受贈者に条件がありますので誰でも利用出来る訳では ありません。

(税制改正前)

贈与者 贈与をした年1月1日において65歳以上の父母
受贈者 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の贈与者の推定相続人

(平成27年税制改正後)

贈与者 贈与をした年1月1日において60歳以上の父母または祖父母
受贈者 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫

(2)贈与財産の種類、金額、回数に制限がありません。

(3)相続時精算課税を選択した場合は贈与者が亡くなるまで適用され暦年課税との併用や途中から暦年課税に変更することは出来ません。

(4)贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に納税地の税務署に一定の書類とともに「相続時精算課税選択届出書」及び「贈与税の申告書」を提出しなければなりません。
納税額が発生しない場合でも申告する必要があります。

(5)養子も実子と同様に利用可能です。

住宅取得等資金

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、20歳以上である者が父母や祖父母などの直系尊属から住宅購入用資金の贈与を受けた場合において、一定の要件を満たすときは下記の表にある非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。

参考1
(住宅用家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合の非課税限度額)

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 省エネ住宅 左記以外の住宅
平成31年4月1日~平成32年3月31日 3,000万円 2,500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1,500万円 1,000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 1,200万円 700万円

※省エネ住宅は断熱等性能等級4、耐震等級2以上、免震建築物、一次エネルギー消費量等級4以上、高齢者等配慮対策等級3以上のもの

参考2
(上記参考1に該当しない場合の非課税限度額)

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 ※省エネ住宅 左記以外の住宅
~平成27年12月31日 1,500万円 1,000万円
平成28年1月1日~平成32年3月31日 1,200万円 700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1,000万円 500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 800万円 300万円

※省エネ住宅は断熱等性能等級4、耐震等級2以上、免震建築物、一次エネルギー消費量等級4以上、高齢者等配慮対策等級3以上のもの

注意ポイント
(1)贈与者、受贈者やその他にも居住用家屋の条件など詳細な定めがあり全てに該当しないと利用できませんので詳しくは国税庁のホームページでご確認下さい。
参考までに受贈者のおもな条件を以下で挙げましたが全て満たさないといけません。

  • 贈与をした年1月1日において20歳以上
  • 贈与者の直系卑属であること
  • 贈与を受けた年の所得税に係る合計所得金額が2000万円以下
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること
  • 配偶者や親族等の特別な関係にある人からの住宅用家屋を取得したものでないこと
  • 配偶者や親族等の特別な関係にある人からの請負契約等により新築若しくは増築等をしたものでないこと
  • 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
  • 受贈者が住宅用家屋を所有すること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
  • 贈与を受けた時に日本国内に住所があること
  • 但し上記の場合でも下記の1又は2に該当する場合は対象となります。
    1. 贈与を受けた時に受贈者が日本国籍を有しかつ受贈者または贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有していたこと
    2. 贈与を受けた時に受贈者が日本国籍を有していないが、贈与者がその贈与の時に日本国内に住所を有していたこと

(2)贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に納税地の税務署に一定の書類とともに「贈与税の申告書」を提出しなければなりません。

(3)住宅取得等資金の贈与を受けた場合に相続時精算課税制度を適用するときは贈与者の60歳という要件は適用されません。

居住用不動産の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与が行われた場合又は居住用不動産の取得資金の贈与が行われた場合に一定の要件を満たすと贈与税の計算において暦年課税の基礎控除110万のほかに最高2000万円まで控除することが出来る制度です。

注意ポイント

  1. 婚姻届出日から贈与日までの期間が20年以上であること。
  2. 居住用の不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること。
  3. 贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住しかつその後も居住する予定であること。
  4. 同じ配偶者からこの特例制度を受けたことがないこと。
  5. 贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に納税地の税務署に一定の書類とともに「贈与税の申告書」を提出しなければなりません。

相談事例(4) Q:子供に不動産の贈与を検討しておりますが贈与税と相続税はどのように違いますか?

A:贈与税は被相続人が生前贈与により財産を減らした場合とそうでない場合に相続税の負担に不公平が生じないよう相続税を補完する税金です。
そのため相続税逃れをけん制する意味でも高い税率が設定されています。
贈与税は相続税に比べて課税最低限も低くなり慎重に生前贈与を行わないと大きな税金を納める結果となりかねませんが税金の専門家である税理士からアドバイスを受けてうまく活用すれば相続税対策を効果的に進めることが可能です。
参考までに贈与しても贈与税がかからないと考えられるおもなものとしては下記が挙げられます。
但し、税務署の判断となるため額などによっては絶対贈与税がかからないとは言い切れないため注意が必要です。

  • 香典、見舞金、結婚祝い金など社会通念上相当と認められるもの
  • 税務署が認める通常必要な生活費や養育費
  • 離婚時の財産分与で社会通念上相当と認められるもの
  • 法人からの贈与は一時所得となり所得税や地方税がかかってくことに注意となります
    また下記のように贈与の意図しないうちに税務署に贈与とみなされてしまうこともあるようなので注意が必要です。
  • 保険料を負担していない子供が親の満期保険金を受け取るケース
  • 著しく不動産の価格を低くして親子間で売買してしまうケース
  • 親からの高額な借金の免除を受けるケース
  • 親が子供の借金を肩代わりするケース
  • 不動産の共有者である親が持分を放棄して子供の持分が増えるケース
  • 信託の設定で親が委託者、子供が受益者となるケース

(比較図)

相続税 贈与税
最低税率 1000万円以下10% 200万円以下10%
最高税率 6億円超55% 3500万円超55%
但し特例贈与財産4500万円超
基礎控除 3000万円+
法定相続人の頭数×600万円
110万円

相談事例(5) Q:遺贈と死因贈与とはどのような違いがありますか?

A:どちらも亡くなることで効力が発生します。
違いを比較したものを図にしましたので参考にしてみて下さい。

遺贈 死因贈与
意思表示 単独で一方的に可能 契約のため当事者の合意が必要
死後の放棄 受贈者の放棄も可能 受贈者の放棄が不可
作成方法 遺言による 口頭でも可能だが実務上は契約書による
財産 放棄をされてしまうことがある 確実に渡すことが可能
贈与者の撤回 遺言の書き直し可能 撤回は可能だがトラブルになりやすい
負担付で義務の履行があると基本的に不可
登録免許税 相続人への遺贈は不動産評価額の0.4% 相続人への死因贈与は不動評価額産の2%
不動産取得税 相続人は非課税 誰でも課税
相続税 課税対象 課税対象

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