親のアパート管理と相続発生後の共有名義を回避するには
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
高齢の親が住むアパートをどのように管理するか
既に配偶者が他界して親1人で暮らしているケースや子供と同居しているケースなどでも親名義の自宅兼アパートの管理について今現在は、賃貸管理や修繕などの維持管理を親がなんとか自身で行っているものの高齢となってきた親のことを考えるとこのままで大丈夫なのか子供の立場としては漠然とした不安を抱えてしまいます。
もし親が認知症になってしまうとアパートの賃貸管理や、大規模修繕、必要な場合の売却処分、建替え等の維持管理も出来なくなってしまうおそれがあります。
また万が一相続が発生してしまい、相続人の共有名義になってしまうと、アパートなど不動産の大規模修繕や売却処分を行いたい場合に共有名義人全員の承諾が必要となってしまいます。
共有者同士の意見が異なった場合や共有者の意思能力が喪失している場合には、思うように手続きを進めることができなくなるというリスクも考えられます。
さらに共有者に相続が発生してしまうと共有者が増えて細切れ状態となり意思統一が更に難しくなってしまう可能性も出てきてしまいます。
このように親が持つアパートなどの不動産で子供としては何か親にアドバイス出来るようなことがないのかお悩みの方もいらっしゃるかと思います。
下記に事例をあげて法律で用意された制度を利用した場合やそうでない場合にどのような違いが生じるのか簡単に説明したいと思います。
事例 家族の状況
・5年前に父が他界し現在、母と独身の長女が築30年の自宅兼アパートで同居している。
子供は長女と長男がいます。
・母は現状として元気なためアパートの賃貸管理や修繕などの維持管理は自身で行っています。
・母の意向としてはこのままアパートの管理を維持して必要であれば建て替えも行っていきたい。
・亡くなった後には独身の長女に相続してもらいしばらくの間、アパートを続けてもらいたいと考えている。
ただし、長男に残してやれる金融資産ではバランスが取れないため長女ともめてしまわないか不安がある。
上記事例における将来の検討
何もしない場合
母の年齢を考えると認知症や脳梗塞といった病などで判断能力が喪失した状態になってしまう場合が考えられます。
上記のような病で判断能力が無くなってしまうとアパートの賃貸管理や、大規模修繕、必要な場合の売却処分、建替え等の維持管理も出来なくなってしまうおそれがあります。
相続が発生してしまうと長女と長男が不動産を共有名義となってしまうため、アパートの維持管理をするための意見が合わないと亡き母の意向通りに管理が出来なくなってしまい、最終的に長女が長男から持分相当の代償金を払わざる得なくなる可能性や売却したうえで分配せざるを得ない可能性も出てきてしまいます。
成年後見制度を利用する場合
今回の事例のように母の意向でもある自宅兼アパート不動産を活用する建て替えなどの場合には家庭裁判所の許可が必要となり、処分にあたっては合理的な理由を証明する必要があり家庭裁判所の判断によっては許可が認められない可能性もあります。
その他にも本人である父にある程度の財産がある場合には司法書士や弁護士などの専門家である第三者が家庭裁判所から選任される可能性が高くなってしまいます。
例え子供である長女が後見人候補者として申立てを行っていた場合でも同様となります。
このような場合には本人の財産から第三者への報酬が発生してしまいます。
家族信託制度を利用する場合
自宅兼アパート不動産の所有者である母を委託者、アパート管理経営において信頼のおける長女を受託者、実際の家賃などの利益を受ける権利を持つ母を受益者として母名義の自宅兼アパート不動産や預貯金の一部などを信託財産とするような信託契約を母と長女が行います。
また母が亡くなった際には受益権を2分の1ずつ長女と長男が承継するとして第二受益者と定めることで母の不動産を平等相続したものと同様の効果を実現できます。
長女と長男は平等にアパートの賃料収入を得ることが出来る一方で母から管理処分権限を与えられ受託者となっているのは長女なので長男は長女のアパート管理方針や修繕、建て替えや売却などの判断については口を出すことが出来なくなります。
家族信託を利用し契約の目的を詳しく定めておくことで判断能力が徐々に低下し認知症になった場合でも受託者となった長女が目的に従い長女の判断でアパート経営を行うことができ、必要に応じて母の意向に沿ったアパート修繕や建て替えや売却などの手続きが可能となります。
ただし上記のようなスキームで信託契約を作成しても最終的に信託の契約終了時に不動産が長女と長男で共有の状態のままであれば当初の問題を先送りしただけのような結果となってしまいかねません。
したがって、信託財産にしたものは最終的に全て現金化して平等に分配することや、母及び長女が亡くなった場合に信託を終了させる契約にするなど家族兄弟間でよくよく検討したうえで家族信託制度を利用するか否かを判断していく事が重要となります。
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