任意後見の利用と法定後見の違い
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
どのような制度か。
現行の任意後見制度は平成11年の成年後見法改革で「本人の自己決定の尊重」と「本人の保護」との調和を図る観点から導入されました。
本人の判断能力がしっかりしているうちにあらかじめ契約に基づき権限を与えられた任意後見人が家庭裁判所や任意後見監督人の監督のもと本人の財産管理を行います。
信用のおける人を代理人に定めて財産管理や身上監護など、どのような事務を委任するのか具体的な内容を決めて公正証書で作成しておきます。
本人の判断能力が低下した場合に家庭裁判所に申立てをして任意後見人を監督する任意後見監督人が選任されることによってその効力が発生する制度です
任意後見制度の利用形態や法定後見制度との異なる点などを説明させて頂きます。
任意後見制度の3つの利用形態
将来型
本人の判断能力が将来低下するまで代理権を発生させない利用形態をいいます。
移行型
任意後見契約と同時に任意代理権を与え、判断能力が将来低下した時点で任意後見契約に移行させる利用形態をいいます。
この移行型は利用が多くなっていますが近年、任意後見監督人が選任されない段階で受任者が任意代理権を悪用して不当な財産処分が行われた事件などがニュースで取りあげられ危険性が意識されるようになりました。
即効型
判断能力が低下してきている本人と任意後見契約を締結後、時間をおかずにすぐに効力を発生させる利用形態をいいます。
法定後見制度の利用の検討も考えられますが任意後見制度の方が後見人による契約とは関係なく本人が単独で契約締結可能なので本人の意思決定権が尊重される傾向となる。
将来型と移行型の選択基準
将来型の場合
財産管理や身上監護の委任を開始する段階で本人の判断能力が十分ありその後も判断能力があるうちは財産管理などを本人で行ない将来判断能力が低下した場合に信用のおける者に管理を任せたいという場合には任意後見契約を選択することになるかと思います。
移行型の場合
現在本人の判断能力がしっかりしている場合でも身体的な障害などですぐに財産管理や身上監護の委任を他人に任せたいという場合には任意代理契約を締結することになります。
但し、本人が高齢であれば判断能力が低下した場合に備えるために任意代理契約と同時に任意後見契約を締結し判断能力が低下するまでは任意代理で処理し本人の判断能力が低下した後では任意代理契約を終了させ任意後見監督人の監督下で任意後見契約に移行していくという選択になるかと思います。
この移行型は先にも述べましたように悪用のおそれもあるため任意代理契約には受任者の監督に関する約定も定めておくことが望ましいと思われます。
法定後見制度と任意後見制度の選択
法定後見と任意後見は同時併用できない
法定後見と任意後見は同時に併用できないため任意後見契約を締結している場合、基本的には本人の判断能力が低下した場合には家庭裁判所で任意後見監督人を選任して後見契約が効力発生します。
但し、既に任意後見制度を利用していた者でも任意後見人に与えた代理権の範囲が狭く新たな代理権が必要になったが既に本人の判断能力が不十分となってしまったケースなど本人の利益のため特に必要と認められるときがある場合は法定後見開始の審判を受けて任意後見から法定後見の移行が認められます。(参考 任意後見法10条1項)
法定後見制度と任意後見制度の違い
両制度の利用がともに可能な場合は法定後見か任意後見かいずれの制度を利用すべきか選択に迫られますが制度の違いを確認し理解したうえで決定する必要があります。
法定後見と任意後見の主な違いを下記の図でまとめましたので参考にしてみて下さい。
法定後見制度 | 任意後見制度 | |
---|---|---|
本人の事理弁識能力の程度 |
|
|
効力発生時期 | 後見開始審判確定後 | 任意後見監督人の選任審判確定後 |
監督 | 家庭裁判所(監督人が選任される場合あり) | 任意後見監督人 |
後見人等の選任 | 家庭裁判所が選任 | 本人が決める |
後見人等への報酬 | 家庭裁判所が決め後見開始1年後の支払い | 契約で定める |
後見人の業務 | 本人の類型程度により異なる | 契約で定める |
法律行為の取消権 | あり | なし |
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