親亡き後の問題
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
親亡き後に障害のある子供の生活をどのように保障していくか
障害をもつ子供のいるご両親の多くにとって自身が亡くなった後の子供の生活を考え将来の不安を抱えられています。これは親亡き後の問題ともいわれ新聞などでも取り上げられることがあります。
こうした親亡き後の障害を持つ子供の生活を守っていく方法として一般的に成年後見制度の活用が考えられます。
成年後見制度を利用した場合でも障害のレベルによっては、本人自身による財産の処分や散逸をしてしまう危険性も完全には排除できない可能性もあります。
もちろん後見人が付いていれば取消権は付与されるため保護は図られていますが詐欺などにより流失した財産を取り戻すのは非常に困難と考えられます。
近年では成年後見制度で対応できない部分に関しては、信託を設定して成年後見制度との併用などで
こうした問題に対処していこうという考えも徐々に広まってきております。
下記に事例をあげて信託の制度を利用した場合を簡単に説明したいと思います。
事例 家族の状況
・父は既に他界し現在、母と障害を持つ長女が築30年の母名義の自宅兼アパートで同居している。
子供は長女と長男がいます
・母は現在アパートの賃貸管理や修繕などの維持管理は自身で行っています。
・母は高齢になってきており、自分が亡くなった後の長女の生活を非常に心配しています。
・長女が亡くなるまではアパートを活用して長女の生活を守ってもらいたいと考えている。
長女が亡くなった後は長男に全て財産を相続させたいとの意向がある。
上記事例における将来の検討
何もしない場合
母の年齢を考えると認知症や脳梗塞といった病などで判断能力が喪失した状態になってしまう場合が考えられます。
もし判断能力が無くなってしまうとアパートの賃貸管理や、大規模修繕、必要な場合の売却処分、建替え等の維持管理も出来なくなってしまうおそれがあります。
相続が発生してしまうと長女と長男が不動産を共有名義となってしまうため、アパートの維持管理をするための長女に付いた後見人や家庭裁判所の許可がないと思うような修繕や必要な場合の売却や建て替え等も厳しくなる場合も考えられます。
成年後見制度を利用する場合
今回の事例の障害を持つ長女乙が「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」であれば、法定後見制度の利用が考えられます。
後見人が長女に付くと長女の財産は後見人が管理していくことになります。
また母が亡くなり相続が発生すると、後見人は相続した長女の財産も同様に管理していくことになります。
後見制度は身上監護に関する法律行為と日常生活に関する事務処理を行い本人の生活と財産を守っていくための制度なので不動産の大規模修繕や売却処分や建て替えなどの積極的な活用に関しては消極的にならざるを得ないと考えられます。
また後見人の候補者として家族や親族を希望していても家庭裁判所の判断により第三者(司法書士や弁護士など)が選任されてしまう可能性も高いため、不動産や特定の金融資産など積極的に活用したい財産がある場合には信託契約との併用を検討していく必要があります。
任意後見制度を利用する場合
今回の事例の障害を持つ長女乙が「事理を弁識する能力が不十分な状況にある者」であれば、任意後見制度の利用が考えられます。
任意後見の場合は法定後見とは異なり契約となるため家族や信頼のおける親族に後見人となって貰うんことも可能となります。
ただし、法定後見と異なり財産管理に関しては代理権を与えらるのみで取消権が付与されないので、もし長女が詐欺まがいの不当な取引などに契約してしまった場合に財産の処分や散逸をしてしまう余地は残されてしまいます。
したがって、不動産や特定の金融資産など価値の高いものは信託を併用して名義を受託者に移転させ長女の判断で処分ができないようにしていく手段も検討していく必要があります。
家族信託制度を利用する場合
今回の事例のような場合に家族信託の契約を結んでおけば、母甲にとってもアパートの維持管理運用を信頼のおける長男若しくは親族に託しておけば得られる利益は母となる組成にすることで元気なうちは変わりない生活を続けられ認知症など判断能力が低下した場合でも家庭裁判所の許可を得ることなく意向にしたがって不動産の管理運用を円滑に行っていくことが可能となります。
また家族信託を利用することで信頼のおける長男若しくは親族などが財産を管理運用する受託者となるため、十分な判断能力のない長女が第三者から不当な契約を結んでしまうことなどからも守ることが可能となり、長女亡き後の財産の帰属権利者を決めておけば契約の中に母の遺言的な機能を持たせることも可能となり今回1番の悩みでもあった障害を持つ長女の安定した生活の確保の実現という意味で有効な方法となり得ます。
家族信託を利用した場合でも、長女の身上監護などにも配慮する必要がありますので、法定後見制度や任意後見制度との併用を検討していく必要があると考えられます。
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