任意後見契約発行後の任意後見人と金融機関との取引について
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
任意後見契約を締結すると
任意後見契約は、本人の判断能力がしっかりしているうちに、将来に不安を感じて判断能力が低下した段階であらかじめ信頼のおける家族や親族等に財産の管理等を委任する契約です。
公正証書で任意後見契約を結ぶと契約を行ったことについては公証人が法務局に嘱託して登記がなされます。
契約締結後、本人の判断能力が低下した段階で任意後見受任者が家庭裁判所に申立てをして任意後見監督人が選任されることによってその効力が発生しあらかじめ本人から委託された必要な財産管理を任意後見人が行うことになります。
本人の金融資産の多くは金融機関に預けてあるのが一般的と思われますので、本コラムでは任意後見人としての職務遂行の要となる金融機関との取引について基本的な確認しておくべきポイントなどを説明させて頂きます。
最初に金融機関への届出を行う必要がある
そのため、本人が認知症等になり任意後見契約を発効させ任意後見人に就任した場合には任意後見人側からの届出が要求されています。
※なお、金融機関によって取り扱いも異なりますので事前に電話等で問い合わせしたうえで提出書類を確認のうえ行かれることをおすすめします。
事前に連絡しておくことで金融機関の窓口担当者も情報の確認ができ手続の時間短縮にも繋がる可能性があります。
届出を行う際の主な提出書類
・成年後見制度に関する届出書
各銀行で用意しており様式は異なりますがを提出する取り扱いになります。
・任意後見人の登記事項証明書
・任意後見監督人の選任審判書(確定証明書)
・任意後見人の印鑑証明書
注意ポイント
金融機関で最初に成年後見制度に関する届出を行う場合に任意後見人にとって最寄りの利便性の良い同金融機関の支店での取引が可能か否か、そのための手続方法等を窓口の担当者に確認しておくといいでしょう。
特別な届出をしないと被後見人の口座のある支店に取引が限られてしまう取り扱いの金融機関も中にはあり、こちらから確認しないと窓口では当然には案内対応して貰えない場合も多いようです。
預金通帳の名義について
ただし、各融機関によって預貯金の名義について取り扱いが異なっておりますが、本人の財産と任意後見人の財産が混同してしまうことのないように明確に区別して管理を行わないと横領等の問題が生じてしまうため本人名義の通帳のままやむを得ず管理せざるを得ないような場合は特にに注意が必要です。
預金通帳の名義を「本人の名前〇〇後見人の肩書後見人の名前〇〇」に変更した場合の確認すべきポイント
各電気・ガス・水道等の公共料金の引き落としの設定がなされている場合に、預金通帳の名義を変更した場合に振込や引き落しがそのまま継続されるか否かを金融機関の窓口担当者に確認した方がいいでしょう。
もし、振込や引き落しの継続が出来ない場合に金融機関で対応して貰えない場合には任意後見人が振込や引き落しの機関に連絡を取り対応するなど滞納しないように注意する必要があります。
キャッシュカードの発行について
任意後見人が行う日常的な預貯金取引についてキャッシュカードが使用出来ないと取引のたびに窓口で手続を行わなければならず大変不便ですが、後見人等に対するキャッシュカードの発行や利用を認めるか否かについては各金融機関によって対応が分かれるようです。
認めない理由としては後見人の不正使用防止や内部的なシステムの問題があるようですが、財産管理を任せられた後見人にとって事務的な負担が過大になり無駄な労力を強いるという意味では疑問を感じざる得ません。
貸金庫について
任意後見契約に基づいて被後見人である本人の重要書類等を金融機関の貸金庫を利用する場合がありますが、利用にあたっては本人の財産と任意後見人の財産が混同してしまうことのないように金融機関に相談のうえ「本人の名前〇〇後見人の肩書後見人の名前〇〇」で利用契約を結ぶのが好ましいと
考えられます。
後見人自身の名義で契約を締結しないよう注意が必要と考えられます。
もともと本人が貸金庫を利用していた場合に後見人が管理する場合には任意後見契約の発効後に任意後見人側からの届出を別途忘れずに行うことも注意が必要となります。
株券やその他の有価証券をもっている場合
したがって、任意後見契約が発効した後は任意後見人が株券発行会社や株主名簿管理人を確認のうえ連絡をとり、配当や議決権行使等に関する書面を任意後見人へ送付して貰うよう依頼することが必要となりますので注意する必要があります。
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