故人の本籍が旧樺太等にあった場合
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
相続手続きを進める場合には原則として故人の出生までの戸籍を集める必要がある
相続が発生すると遺産として一般的に預貯金や不動産をお持ちの場合が多いかと思われます。
遺言書が無い場合は相続人間で遺産の内容を把握し話し合いで決めた遺産分割を進めるために預貯金の解約手続きや不動産の名義変更等の様々な相続手続きを行う必要があります。
相続手続きを行うには銀行・証券会社等の金融機関や法務局等の窓口では遺産分割協議を行った法定相続人全員の署名捺印が揃っているかを確認証明するために故人の出生~死亡までの戸籍や相続人の現在戸籍の提出が求められます。
故人の出生までの連続した戸籍が求められるのは故人の過去の戸籍の記載情報欄に法定相続人である子供が何人いるのか第三者である手続きの窓口機関が確認するものとして重要な資料となるからです。
したがって、一般的には生まれた時までの戸籍を求められることが多い訳ですが、故人の遡った戸籍を収集していると旧樺太等で出生したために本籍地が過去にあったという情報が記載されている場合あります。
このような場合に相続実務ではどのように進めていくのか本コラムでは説明致します。
旧樺太の戸籍とは
北海道の北に位置する南北に細長い島で1945年8月、第2次世界大戦で南樺太を放棄するまで日本の領有下にあり約40万人以上の日本人が暮らしていたといわれます。
戸籍簿等の原本は終戦時に現地から持帰られ,その後に樺太庁残務整理事務所やその業務を継承した外務省外地整理室に持込まれ,戸籍法上の戸籍簿ではなく,行政文書のひとつとして外務省において事実上保管されております。
外務省が保管する戸籍について
外務省では旧樺太に関する戸籍事務を行っているわけではありませんので戸籍の交付を受けることは出来ません。
ただし、故人の旧樺太の本籍地が外務省が保管する行政文書に該当する場合には便宜的にその開示請求を受付ていますので「旧樺太の戸籍に関する証明」を交付して貰うことが可能です。
外務省が保管している旧樺太の戸籍簿
•大泊郡知床村 戸籍簿 15冊 除籍簿 3冊
•大泊郡富内村 戸籍簿 1冊
•大泊郡遠淵村 戸籍簿 4冊
•敷香郡内路村 戸籍簿 9冊
•敷香郡散江村 戸籍簿 4冊
•元泊郡元泊村 戸籍簿 8冊
注意すべきポイント
上記の6村に該当する場合のみ「旧樺太の戸籍に関する証明」の請求を行うことが可能となり保管していない場合には保管していない旨の回答を受けるのみとなります。
また戸籍簿及び除籍簿は終戦時に戸籍事務が中断し,現地から持ち出されているため、終戦時以降の婚姻や出生等,更には終戦後の内地への転籍などは記載されていないということです。
また旧樺太戸籍については戸籍法関係の諸規定は適用されないため,戸籍法に基づいた請求等は受付けられていないため当然正規の戸籍とはなりません。
上記の6村に該当しない場合には請求自体も出来ないということになります。
〇相続手続実務の対応
相続手続を進める場合の実務としては、事前に窓口で確認したうえで、旧樺太に本籍があった故人について戸籍を遡る必要があるときは、前述した保管対象の6村に該当する場合には外務省に「旧樺太の戸籍に関する証明」を申請し、戸籍が保管されていないときは、「保管していない旨の回答」を取得します。
さらに、遺産分割協議書の記載文言に「他に相続人がいない旨」を追記し署名捺印のうえ、法定相続人全員の印鑑証明書を添付していくことで各窓口で対応して頂いているのが現状といえます。
北方領土に関する戸籍について
なお、歯舞群島にかんするものは根室市が保管しています。
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