未成年と親権者の利益相反行為
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
利益相反行為とは。
遺言書が無い場合、相続手続きを行うために遺産分割協議書を作成し書類に法定相続人全員の実印での署名捺印が必要となりますが共同相続人の中に未成年者がいる場合に未成年者の利益の保護を図るため民法826条では次のように定めています。
「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」
民法826条の利益相反行為とは親権者が利益となり未成年の子が不利益となる行為、親権に服する未成年の子が複数いて一方に利益となり他方に不利益となるような行為などで財産上・身分上の行為をいいます。
利益相反行為に当たるかどうかの判断
判例は利益相反行為に該当するかどうかは、「親権者が子を代理してした行為自体を外形的・客観的に考察して判定すべきであって、親権者の動機・意図をもって判定すべきでない」という形式的判断説に立っています。(参考 最判昭42・4・18民集21・3・671)
これは実質的な判断が必要になると家庭裁判所で特別代理人の選任申し立てを行う際に個々の一切の事情を判断することになり実務的に現実的ではないという批判が大きなところにあると考えられます。
確かに未成年の子に代わって親権者が必ず子に利益となる遺産分割協議をするかの判断を他人である家庭裁判所が判断することは不可能に近いものがあるように思います。
利益相反に該当するか否かの判断を行為の外形で決めていかざるを得ないのは事務処理の上でも仕方ないのでしょう。
特別代理人について
特別代理人は家庭裁判所に選任の申し立てをする必要があります。
実務では未成年者の利益保護に相応しい適切な者を家庭裁判所が探すことは困難であるため親権者などの申立人が候補者を挙げてその者が特別代理人に選任されることが多くありますが未成年者の利益保護の観点から考えると意見や批判が出てしまうところでもあります。
利益相反行為に違反する場合
親権者が自ら未成年の子を代理して利益相反行為を行う場合に民法では定めがありませんが無権代理行為として無効となるという考えが判例・通説となっています。
(参考 最判昭9・5・22民集13・1131)
また特別代理人が家庭裁判所から与えられた権限を越えて行為をした場合や権限内の行為でも未成年者と特別代理人との利益相反の場合は同様に無効となります。(参考 最判昭44・11・8家月22・5・54、最判昭57・11・18民集36・11・2274))
但し、無効行為でも未成年の子が成年になり追認を行うなどの場合には有効となります。
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