遺産分割の対策に使える生命保険金
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
生命保険金の活用について
生命保険の受取人を被相続人以外の相続人に指定しておくことで受取人固有の財産となります。
受取人固有の財産になることで遺産分割協議の対象財産とならないため、生命保険金に関しては確実に特定の相続人などに相続させることが可能となるわけです。
仮に被相続人に多額の借金があり受取人が相続放棄を行っていた場合でも受取人の固有の権利として相続放棄に関係することなく受取ることもできます。
遺産分割対策として生命保険金の活用を検討するにあたり、その効果やポイントなどを説明したいと思います。
相続人が生命保険金を受け取る場合
生命保険金に関しては受取人の固有財産扱いとなるため、遺産分割協議をする必要がないため、銀行の預貯金や株式などのように、相続人全員の遺産分割協議が成立するまで保険金が凍結することなく受取人自身で手続きを進めていくことが可能です。
また死亡した故人が被保険者で受取人が相続人である契約の場合に受け取った保険金の合計額が(法定相続人の頭数×500万円)までであれば相続税を課税されることもありません。
つまり相続財産が生命保険料として減少したうえに生命保険金の非課税枠が発生することで相続税が発生する場合の相続人が負担する納税資金も軽減できるため大きな節税対策につながります。
遺産分割対策として保険金を活用する場合
亡くなった故人が遺言書を遺していない場合
法定相続人全員の遺産分割協議での同意が必要となります。
したがって、主要な相続財産が分割換金しにくい不動産や自社株などといった場合には注意が必要となります。
このような相続財産が分割換金しにくいケースの場合では、以下のような問題が考えられます。
不動産の場合
特定の相続人が被相続人名義の不動産に現に居住しており、引っ越しが厳しい場合に他の相続人が法定相続分の権利を主張してくるケース
自社株の場合
被相続人が会社の経営者で特定の相続人を後継者としているが、他の相続人が法定相続分の権利を主張してくることで株式が分散化してしまうケース
上記のようなケースを生前に想定して生命保険に加入しておくことで、分割換金しにくい相続財産を特定の相続人が取得し、他の相続人への代償金を支払う原資として保険金を使い代償金の負担を減らすことも可能と考えられます。
また相続税が発生してしまう場合に遺産分割協議がまとまらず10か月の申告期限に間に合わないと未分割のまま法定相続分で取得したものとして相続税申告及び納付を行うことになります。
本来、相続税の特例(小規模宅地や配偶者の特例など)を利用することで納税額を軽減できるようなケースでも未分割のままの申告では相続税をまともに納めなくてはなりません。
このような事態にも生命保険金が納税資金の原資に活用できることは言うまでもありません。
亡くなった故人が遺言書を遺している場合
亡くなった故人が直筆にせよ公正証書にせよ遺言書を遺している場合に特定の相続人へほとんどの財産を相続させる旨の内容の遺言は他の相続人へ遺留分の権利が発生するため、揉めてしまうケースが考えられます。
このような遺留分の主張をあらかじめ生前に想定して生命保険を活用することも考えられます。
受取人を遺言で相続させたい者に指定しておくことで、遺留分を請求された場合の原資にも使えますし、保険料で被相続人の財産額が減少することで、請求可能な遺留分額も減少するため、相続人の負担を軽くさせることが可能となります。
活用にあたっての注意すべきポイント
生命保険金の活用を検討する場合にはある程度早めに加入する必要があります。
保険会社にもよりますが、高齢になるほど、病気のリスクも高まるため、終身保険を利用することが一般的となりますが、保険料が非常に割高となってしまいます。
また相続人が受け取る生命保険金は原則として特別受益とはなりませんが、ただあまりにも相続人間で著しい不公平が生じる場合には相続財産として持ち戻しの対象となってしまう可能性もあるようなので相続人同士で揉めそうな場合には注意が必要となります。
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