相続人の遺留分について放棄したい場合
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
相続人の遺留分について放棄したい場合
自筆や公正証書で遺言を作成した場合でも相続人の遺留分を侵害した場合は侵害された相続人が遺留分の請求を求めてくることがあります。
民法ではこの遺留分の権利について、兄弟姉妹以外の相続人には相続財産の一定割合を最低限保障していますので遺言を作成する場合は相続人が揉めないように遺留分の権利のことまで配慮する必要があります。
(参考 民法1028条)
相続放棄の手続きにおいて推定相続人が相続開始前に家庭裁判所へ相続放棄の申立てを行うことはできませんが遺留分に関しては、相続開始前でも放棄の手続を行うことが法律上、認められています。
相続開始前に遺留分の放棄の申立てを行った場合に手続きの効果や家庭裁判所の審理について説明していきたいと思います。
遺留分の割合について
遺留分は兄弟姉妹以外の相続人について認められますがこの遺留分の割合は基本的には以下のとおりです。
(参照 民法1028条)
相続人が配偶者や子供などの場合
被相続人の財産の2分の1となる。
基本的に各相続人の個別的な遺留分を計算する場合、法定相続分の半分ということになります。
(計算例)相続人が配偶者と子供2人のケース
(法定相続分)
・配偶者の法定相続分:2分の1
・子供の法定相続分 :2分の1×2人=各4分の1
(個別の遺留分)
・配偶者の遺留分:2分の1×2分の1=4分の1
・子供の遺留分 :4分の1×2分の1=各8分の1
相続人が両親などの直系尊属のみの場合
被相続人の財産の3分の1となる。
(計算例)相続人が父母2人のケース
(法定相続分)
・父母の法定相続分:2分の1
(個別の遺留分)
・父母の遺留分:2分の1×3分の1=各6分の1
遺留分の放棄許可の手続
相続開始前に遺留分の放棄を行うには相続人同士の力関係で遺留分の権利を持つ相続人が遺留分放棄を余儀なくなされないように放棄の申立てがなされても家庭裁判所の許可がなされないと効力は発生しません。
(参考 民法1043条)
したがって、家庭裁判所が遺留分権利者の意思確認を行い、不利益とならないか審査されることになりますので申立てを行った場合でも遺留分の放棄が必ず認められるとは限らないということになります。
基本的には書面での照会や回答で放棄の申立てが適正か否か審理判断していくことになりますが、複雑な家庭事情等で書面のみでは不十分と判断されると、調査や尋問などを行い事件内容に応じて個別の方法で行われることもあるようです。
家庭裁判所の判断基準
遺留分の放棄を行う者の自由な意思判断に基づくものである事が大前提となりますが、放棄を行う者の動機や合理的な放棄理由の有無や放棄を行うにあたって、代償となる給付の有無がなされるか等も個別に検討され家庭裁判所が放棄の許可を審理するうえでの判断材料になると考えられます。
遺留分放棄の効果として
相続開始前に遺留分の放棄申立てが家庭裁判所から受理されることで相続財産に対する割合が実質として増加することになりますが、他の相続人が有する遺留分は影響しないため増加することはありません。
(参考 民法1043条2項)
被相続人の債務がある場合
仮に、被相続人に債務がある場合に相続開始前に遺留分の放棄が受理されていても債権者の立場からすると相続発生後は相続人となりますので法定相続分の割合に応じて被相続人の債務を負担することになってしまいます。
債権者に対して、相続債務の負担を免れる方法としては相続発生後から原則として三か月以内に家庭裁判所へ相続放棄の手続きを行わなければなりませんので注意が必要です。
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