相続財産が債務超過となっているか不明な場合の限定承認
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
故人に借金はあるが遺産額と債務額の全体がはっきりしない場合の手続
故人の残した債務額がプラスの遺産額を明らかに上回るような場合には相続人が家庭裁判所に相続放棄を行うことが一般的です。
ただし、故人に借金があっても遺産額と債務額の全体がはっきりしないような場合には、相続放棄をしないで遺産の範囲内で債務を弁済するという留保付きで相続を承認する限定承認を家庭裁判所に行うことも可能です。
相続放棄の手続きと比べるとあまり聞きなれない限定承認の手続きについて趣旨や効果などを説明していきたいと思います。
限定承認の手続きはどのような場合に行うのか
限定承認を行う趣旨としては前述のように相続財産の調査段階で債務超過となっているのかはっきりしないケースで相続放棄を行うことの判断に迷ってしまう場合や、債務超過だと判明している場合でも、家業継承のために相続放棄をしないで親が遺した財産の一部を相続人が買い取りたいといったケースでは、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って相続財産の全部又は一部の価額を弁済することで競売によらずに取得することが可能となるためメリットとなり、手続きを行うことがあります。
(参考 民法932条但し書き)
限定承認の効果について
相続した場合の一般的な効力として民法896条では相続人は、相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。
ただし、限定承認の申述を行った相続人は民法922条により相続によって得た財産の限度で被相続人の債務及び遺贈を弁済すれば足りると定められております。
相続財産の範囲内で弁済すれば足りるということは、相続人の固有財産から債権者へ弁済する必要がないということになります。
したがって、相続債権者から限定承認者に強制執行を行ってきた場合でも請求異議を行い排除を求めることが可能となります。
(参考 大判 昭和15・2・3 民集 19・110)
訴訟において相続債権者が限定承認を行った相続人に対して債権全額の弁済請求を行った場合には、相続財産の範囲内で執行できる旨の留保付きで請求が認められるということになります。
(参考 大判 昭和7・6・2 民集 11・1099)
また民法925条で限定承認を行った場合には相続人が被相続人に対して有した金銭などを貸していた時の債権やその反対に債務を持っていた場合、その権利義務は消滅しなかったものとみなされることになります。
限定承認の手続きについて
申立てを行う者
限定承認を行う者は相続人となりますが、相続人が複数いる場合には相続人が個別に申立てを行える相続放棄とは異なり共同相続人全員で申立てを行う必要があります。
(参考 民法923条)
申立て先
亡くなった故人の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続の開始があったことを知った時から三か月以内に申立てを行う必要があります。
相続財産の調査に時間がかかってしまい三か月を超えてしまいそうな場合に限定承認を行うか否かの判断に迷うようであれば、家庭裁判所へ期間伸長の申立てを行う必要があります。
(参考 民法915条)
申立ての際の一般的な書類
※審理に必要な場合は追加書面の提出が求められることもあります。
被相続人に関するもの
・死亡記載ある戸籍謄本、相続人を確定するための出生から死亡までの遡った戸籍謄本
・最後の住民票(除票)又は戸籍の附票
申立人に関するもの
・相続人全員の現在戸籍謄本
・財産目録(積極財産及び消極財産を含む)
限定承認受理後の手続きについて
受理後は限定承認者は相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告後に相続債権者、受遺者の順に清弁済を行い清算手続きを行っていくことになります。
最終的に相続債権者や受遺者に弁済しても相続財産が残れば相続人間で遺産分割して財産を取得していくこととなります。
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