厚生年金加入者の死亡手続きについて
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
厚生年金加入者が死亡すると
前回のコラムでは国民年金加入者の死亡手続きについて説明しました。
国民年金加入者の死亡手続と提出書類など似ている部分も多いですが、前回に引き続いて今回は厚生年金加入者の死亡手続きについて説明したいと思います。
従来は民間企業に勤めている方は厚生年金に加入し、公務員や私立学校の教職員は共済年金に加入していましたが、平成27年10月からは、公務員等も厚生年金に加入することとなり統一されました。
基礎となる国民年金を1階部分の年金と例えますと厚生年金は2階部分の年金となります。
相続相談にいらっしゃる方の中には厚生年金手続きのことでご質問を頂くこともありますので本コラムでは厚生年金加入者が死亡した場合の手続きとはどのようなものかポイントを説明したいと思います。
未支給年金の請求及び死亡の届け出について
厚生年金受給者が亡くなると、受け取っていない年金や亡くなった後に振り込まれた年金のうち亡くなった死亡月の分まで受給できることになっています。
この未支給年金については、生計が同一であった以下の遺族が故人の未支給年金を代わりに請求し受け取ることになります。また未支給年金の請求と一緒に年金受給者の死亡届を提出することになります。
仮に未支給年金を請求しない場合でも死亡の届け出は必ず必要となります。
未支給年金を請求できる遺族の範囲及び順位
第1順位、配偶者
第2順位、子
第3順位、父母
第4順位、孫
第5順位、祖父母
第6順位、兄弟姉妹
第7順位、上記順位1~6以外の3親等内の親族
届出先
・最寄りの年金事務所又は年金事務センター
期間
・原則死亡日から10日以内
※死亡の届出が遅れると年金を多く受給してしまうことになり、返金手続きが必要となるため注意が必要です。
未支給年金を請求する場合の提出書類
・亡くなった年金受給者の年金証書
・亡くなった年金受給者と請求者の身分関係が確認できる戸籍謄本など
・亡くなった年金受給者と請求者が生計を同一にしていたことが確認できる住民票など
※別世帯だった場合には生計同一についての別紙の様式の添付が必要となります
・未支給年金を受け取る金融機関の通帳
死亡届出の場合の提出書類
・亡くなった年金受給者の年金証書
・亡くなった年金受給者の死亡の事実が確認できる死亡診断書のコピーなど
遺族厚生年金の請求について
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者又は被保険者だった者が死亡した場合に請求できる場合がありますが、対象は以下となります。
下記支給要件①から③の者が亡くなり、その者に生計を維持されていた以下の者が対象者(ただし優先順位あり)となります。
〇妻
※30歳未満の子のない妻は、5年間の有期給付となります。
※子のある配偶者、子(子とは18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の障害者に限ります)は、遺族基礎年金も併せて受けられます。
〇子、孫
※18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)
〇55歳以上の夫、父母、祖父母
※支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる。
(支給要件)
①厚生年金加入中の者又は被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に亡くなった場合
※遺族基礎年金と同様に加入期間のうち死亡日の前々月までに保険料を納めた月数と保険料の免除又は学生特例、若年者納付猶予を受けた月数を合計した期間が3分の2以上必要
ただし平成38年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。
②老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が亡くなった場合
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が亡くなった場合
請求先
・最寄りの年金事務所又は年金事務センター
期間
・原則死亡日から5年以内
遺族厚生年金を請求する場合の提出書類
※状況により書類が異なる場合があるため窓口で事前に確認が必要となります
・年金手帳、年金証書又は基礎年金番号通知
・戸籍謄本
・世帯主全員の住民票
・死亡した者の住民票の除票
・請求者の収入が確認できる書類
・子の収入が確認できる書類
・死亡診断書のコピーなど
・請求者の金融機関の口座番号が分かる通帳
遺族厚生年金 中高齢の加算について
加算対象者
以下の要件に該当する妻が遺族厚生年金の加算対象者となり、40歳から65歳になるまでの間、584,500円(年額)が加算されます。
〇夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子(※)がいない妻
※生計を同じくしている子とは18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にある子をいいます。
〇遺族厚生年金及び遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。
※注意ポイント
死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で共済組合等の加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間)以上の要件を満たしていないと加算されません。
遺族厚生年金 経過的寡婦加算について
加算対象者
以下のいずれかの要件に該当する場合は遺族厚生年金に加算されます。
なお、加算額は昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせて、中高齢の加算の額と同額になるよう決められています。
〇昭和31年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した場合
※ただし、遺族厚生年金及び遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったときには別途厚生年金の被保険者期間の要件あり
〇中高齢の加算がされていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達した場合
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