賃貸している不動産を相続した場合

ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

賃貸している不動産を相続した場合

相続が発生して故人の財産に賃貸不動産があり相続した場合には、相続登記により不動産の名義変更を行い所有権を確定します。
賃貸不動産を相続により取得した後には賃貸借関係を整理して終了させることを検討する方も少なくありません。
相続人側で賃貸借関係を終了させたいと思っても一方的に賃貸人側で終了させることは制限されており賃借人側を保護するため法律で守られた要件があるため注意が必要となります。
賃貸人側ではどのように話を進めていくべきかポイントを押さえながら説明をしていきたいと思います。

不動産の賃貸借関係を整理する必要性の検討

そもそも、相続した不動産が賃貸している場合には、相続人が不動産を維持するために、建物にかかる修繕費用や管理するためのコストや賃借人との間に将来発生する紛争のリスクもあり対応や負担となります。
したがって、上記の負担と賃貸借関係を維持していくことによる賃料収入など費用対効果を比較検討しながら相続人にとって、どちらが有益であるか判断する必要があるといえます。

賃貸借契約の終了事由とは

相続人が賃貸不動産を相続登記による不動産を行い前述した賃貸借関係を整理する必要性を検討し、終了させたいとなった場合には以下にあげる主な終了事由があります。

〇解約申し入れによる終了
賃貸人側の意向で解約の申し入れを行う場合には借家契約の期間途中で行うことが多いと考えられますが借地借家法により賃借人の保護の要件が定められており賃借人側に最低でも解約の6か月前までに解約の通知を行う必要があります。
また、借地借家法により解約通知には正当事由のあることが必要であると定められています。
(参考 借地借家法27条、28条)

〇合意解除による終了
賃貸借契約で賃貸期間が定められている場合でも、賃貸人側と賃借人側との合意があれば契約を終了させることは可能となります。
但し、賃借人側が応じない場合が多いためケースによっては立ち退き料などの賃借人側からの条件を聞き入れて交渉していく必要があります。

〇期間満了による終了
賃貸借契約で賃貸期間が定められている場合でも、期間満了をもって当然に賃貸借契約が終了するわけではありません。
期間の定めがある賃貸借契約には法定更新があるため従前の契約と同じ条件で更新されたものとしてみなされてしまうことになります。
法定更新とみなされたくない場合には借家契約の場合では期間満了の1年前から6か月前までに更新を拒絶する旨の通知が必要となります。
(参考 借地借家法28条)
なお、借地契約の場合には遅滞なく賃貸人側より異議を申し出る必要があります。
(参考 借地借家法26条)
但し、借地借家法により更新拒絶や更新異議を申し出るには正当事由のあることが必要であると定められています。

〇賃借人の債務不履行解除による終了
賃借人側の都合による債務不履行とは以下のような事由が挙げられます。
・賃料を長期間滞納
・賃貸人に無断で増改築
・賃貸人に無断で転貸
賃貸借関係は賃貸人と賃借人の信頼関係に基づく継続的な契約であるため、上記のような事由は発生し、第三者がみて客観的に賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたとみられる理由も必要となることに注意が必要です。

賃貸借契約終了に求められる正当事由について

賃貸借関係を終了させるにあたり前述のように借地借家法により賃借人の保護が強く図られていることがお分かりになったかと思います。
借地借家法で求められる「正当事由」については賃貸人側において土地・建物の使用を必要とする事情内容が重視されることになります。

「正当事由」の判断基準の際に考慮されるポイント

・土地や建物の利用状況や従前の経過
・建物の現況(倒壊の危険性など)
・立ち退き料の申し出

立ち退き料について

「正当事由」が乏しい場合には裁判所の裁量で高額になる場合もあります。
特に借地契約の場合に借地権の買取費用が非常に高額となってしまうケースや借地上の建物があれば買取となってしまうケースもあるため、費用負担が重くなる場合もあるため専門家などの意見を聞きながら慎重に交渉を進めていく必要があります。

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